外資系金融マンの読書ブログ

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外資系企業は、日系企業よりも従業員を大事にしているって本当?

日系企業は株主よりも従業員を、米系企業は従業員よりも株主を、という比較はおそらく間違い

〇〇って本当?というタイトルが多いが、いろいろと押しつけがましくて私は嫌いだ。SEOのキーワードを入れやすいのだろう。こういった読み手よりも検索エンジンを重視する記事に対して、Googleが解決するまで待つしかないというのがもどかしい。

ホンダはどうやって軽自動車で成功したのか

この本を読んだ。例によってアフィリエイトリンクではないので安心して踏んでもらって構わない。

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リーマンショック後に北米で普通車の売れ行きが悪くなったとか、そういった議論がされている。

従業員と責任者との間のコミュニケーションについてもいろいろな事例が取り上げられているのだが、これらの描写から長年持っていた違和感の1つが解決した。

「日系企業は従業員を大事にする」という文言に対しての違和感である。

従業員の雇用を大切にする日系企業

まず、日本企業の雇用慣習に対する一般的な理解を挙げておこう。

  • 新卒一括採用: 大学卒業したての従業員ばかりを獲得し、中途採用を積極的には行わない

  • 終身雇用: 採用した従業員を解雇することはなく、希望者の早期定年や出向という形でリストラを行う

  • 年功序列: 給与の上昇は年月とともに行われ、同世代間では給与に差がつくことは少ない

この3点はかなり一般的に認識されているし、これ自体を疑う人はいないだろう。

外資系企業は新卒の人が誰もいないことも珍しくなく、終身雇用ではないし、同世代間でも倍以上の給与差がつくことも珍しくない。この3点は日本企業の雇用慣習といえるだろう。

さて、本書を読んで考える中で、以前から感じていた日本企業の雇用慣習に関する違和感を、ようやく言語化することができた。

その違和感とは「従業員を会社都合で解雇しないことが目的となっている」というものである。

終身雇用といわれる日本企業にも早期定年や片道出向はあるので、リストラがないわけではないが、会社都合で退職させることはほぼないと聞く。しかも、形式的に自己都合にしている*1というよりは、きちんと説得して退職させることが多いようである。

しかし、それだけなのだ。会社都合で解雇しないというだけで、従業員を大事にするわけでもなければ、解雇しないことが人材獲得につながると思っているわけでもなさそうだ。本書にも、会社の方針に納得できない人はやめろと言われたという場面が書かれているとおり、従業員数を拡大することで社会に価値を生み出しているという発想もない。

まさに、会社都合で解雇しないことが至上命題になっているように思える。

従業員を大事にする外資系企業

外資系企業には会社都合の解雇がある。解雇されるときの退職金が割増になるわけでもなく、出向先を用意してくれるわけでもない。

このような「終身雇用ではない」という特徴から、従業員を大事にしないと考えられているケースがときどきある。

しかし、どんな経験を積んでどんなスキルを身に着けたいかという従業員の希望は、多かれ少なかれ考慮されるし、転職について上司に相談しても教えてくれる人が多い。

従業員の成長につながらないことは積極的にアウトソーシングする傾向があり、超長時間労働を行っていても「この環境こそが従業員の成長につながる」という発想はある。*2

つまり、従業員のキャリア形成などはぞんぶんに大事にされている。ただ、仕事に向いていないときに「向いていないから退職したほうがいいよ」と諭されてリストラにあうというのは間違いではない。

従業員を大事にするのか、従業員の雇用を大事にするのか

さて、私がいままで違和感を持っていたのはこの点である。

日系企業は従業員を大事にする、米系企業は株主を大事にする、そういった比較は頻繁に行われるし、一定のコンセンサスとなっている。

しかし、昨今の過労死問題などの話を聞いていると、どうにも従業員を大事にしているようには見えなかったのだ。

この違和感は次のような表現に直すことで解消できた。

  • 日本企業は、従業員を大事にしているわけではなく、従業員の雇用を大事にしている。

  • 日本企業は利益よりも雇用を優先し、米系企業は雇用よりも利益を優先する。

あいにくアルバイト以外で日系企業で働いたことがないので推測だが、「従業員」を「雇用」と言い換えると誤解がないのではないかと思う。

従業員も従業員の雇用も大事にしているという会社にお勤めの方は、稀にみる良心的な企業で働いているという認識を持つべきかもしれない。

*1:外資系企業では、解雇規制がない地域のオフィスに異動させたのちに解雇するという荒業をちらつかせることができるが、日本企業はそういうことをしないと聞く。

*2:日系企業の多くは、異動は会社から言い渡されるものであり、長時間労働は会社のためという発想があるようだ。どんな仕事をするのかを自分で選ぶことは難しく、自分のための長時間労働が許されることもないという話をよく聞く。もちろん、人の指示に従って生きていたほうが楽だと考える人も、長時間労働が自分のためというのは恩着せがましい建前だと疑う人もいるだろう。こういった考え・疑念を持つ人は、単に外資系企業に向いていないだけである。どちらが優れているかという議論ではない。