外資系金融マンの読書ブログ

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長時間労働を解消したら優秀な人が来なくなった

ブラック企業の代表例からホワイト企業の代表例へと変化したとあるSIerの話

業績はすこぶる好調、次なる課題は労働環境

実在する会社かどうかも含めて想像にお任せするが、ここでは仮にA社と呼んでおこう。

A社はインターネットの発展とともに急激に業績を伸ばしていった。月400時間という超長時間労働に支えられて非常に大きな会社へと発展していったのだ。

当時のA社に勤めていた人は「もらったストックオプションが結構な額になった」と喜んでいたり、「あのころは本当に寝られなかった」などと懐かしんでいたりする。

そうして発展したA社の経営陣は、東京に対して次のようなミッションを掲げたそうだ。

業績はとても好調だ。みんなとても良く頑張ってくれている。しかし、頑張りすぎて弊社がブラック企業呼ばわりされている。会社としてのイメージアップのために、労働環境を改善してほしい。

労働環境を改善を見込むが、仕事は増える一方

業績の良かったA社は、苦戦する同業他社を尻目に成長を続けた。

労働環境を改善しようにも仕事が増える一方なので、急激な人員拡大は必至だったそうだ。

しかし、人材が資産となる会社では「社員が育ったから新しい人を採用する」が正しい。

「仕事が増えたから新しい人を採用する」を繰り返すと人材の質が低下し、最終的には仕事をとってこれなくなってしまう。

このため、こういった業界では、自社のリソースに合わせて仕事を選びながら営業しなければならない。仕事が取れるからと言っていたずらに案件を獲得してはいけないのだ。

人員拡大を続けて、年間1,000人以上を採用

A社は労働時間を下げるための施策を打った。労働時間は半減し、従業員数は数倍になった。

人数が増えるとマネジメントコストもかかるし、仕事経験が減ると成長速度は下がって生産性が下がる。さらに人員拡大が必要になってコストが上がり生産性が下がる。

労働時間を半減させるためには人員は倍では済まない。

不用意な人員拡大は人材の質を毀損する可能性がある。それにもかかわらず、年間数十人しか採用していなかったA社は、徐々に年間1,000人を超える採用を行うようになっていった。

補足: 無駄な仕事がある程度削減された職場なら、労働時間と成長はある程度相関するのは事実である。*1

優秀な人はいなくなった

かつて優秀な人材を獲得し、輩出し続けたA社はどうなったのだろうか。

A社はもはや、就職・転職の労働市場で「難関企業」とは認識されなくなった。

転職エージェントの方も、斡旋先に困ったときに「A社あたりになら転職できますがいかがですか」という提案をすることがあるようだ。

A社の出身者も、転職市場で「優秀な人」だとは認識されなくなっている。給与水準もかつてほど高くなくなっているようだ。

いままでは業績も株価も順調に上昇してきた。市場自体が成長しているとはいえ、順調すぎるくらいに成長している。

さて、人材の質を担保しようとしなかったA社は、今後も成長を続けられるのだろうか。*2

ある意味では、最も注目に値する会社の1つのように思える。

*1:超長時間労働は過労死の危険性をはらんでいるが、超長時間労働の会社では「疲れたらやめていい」というのが暗黙の了解になっているし、疲れている従業員がいたら諭して解雇する傾向があるので、実際には過労死は少ない。恐ろしいのは、長時間労働に耐えて当然という文化のある、超はつかない長時間労働の会社である。

*2:世の中には、人材の質によらず成長する会社もあれば、人材の質と業績が連動する会社もある。かつて後者だったA社は、いまはどちらなのだろうか。