外資系金融マンの読書ブログ

外資系金融マンの読書ブログ。読んだら3倍考えるビジネス書評ブログ出張版。読書の要素はあまりない。

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日本企業が成長しないから、スズキの体操代未払い問題が発生した

結局のところ、昨今の労働問題は会社を信用できなくなったところにあるのではないだろうか。

正論を掲げて退職するアルバイトの学生

まず、私が学生だったころのアルバイトについて書いておきたいと思う。

いくつかのアルバイトを経験したのだが、塾講師という面白い職場を最初に挙げたいと思う。

時給が高いから大学生に人気なのだが、いざ働いてみると時間外労働が多くて時給はむしろきわめて悪いのだ。

時間が終了した瞬間に退勤しようとした私は、上長から指導されることになった。「みんなまだ働いているだろう。一人だけ帰るのはおかしい。」というのだ。

次に私は、勤務時間の終了と同時に読書をはじめた。思春期の中学生並に反抗的な態度だが、お金をもらっていないのに働くというのは私の中であり得ないことだった。

最終的には「残業してもらう分だけ高い時給を払っているだろう」と主張する社員と、「残業分が含まれているにしては安すぎますね」という私とで折り合いがつかず、あっという間に退職した。

正論を掲げて搾取されるホワイト企業

その後働いた職場には、対照的な職場があった。時間外労働に非常に厳しい環境で、10分であっても早く来るなら勤怠をつけろと指導された。俗にいうホワイト企業だった。

しかし、このような職場において私はモラルハザードを起こした。

同じアルバイトの学生が退勤せずに喫煙所に行っているのを見て、必ずしも仕事をしていなくても時給が発生するということに気づいてしまったのだ。その後、黙ってトイレに行っては何時間もニュースアプリを読んでいた時期があった。

外資系金融で働くのを夢見て、毎日仕事のための勉強をしていた私は、その企業の社員よりも仕事が早かった。1日の終わりに日報を提出すると「今日も結構な量だね。いままでの人(派遣社員)よりもだいぶん早い。」と言われることが多く、勤務時間の何割かをトイレで過ごしていることは最後まで発覚しなかった。

当時の私には、仕事をしっかりしてくれる人というある種の「信用」があった。

だから、買い出しを頼まれたときに、コンビニによってジャンプを読んでいて時間がかかっても、依頼者に「ああ、そういえば買い出しは済ませておきましたよ」といえば疑われもしなかった。

当時の私には罪悪感などはまるでなく、「これだけサボってもアウトプット量が多いのか。これ以上時給をあげるためには額面を交渉しないと無理だなあ。」などと考えていた。

先日あげた不正の3要素ではないが、実質時給を増加させたいという動機、短時間で仕事をする能力(機会)、給与は成果に対して支払われるものという正当化があったのである。

労働時間を厳密に計るのは、物理的に不可能なはずだ

学生だったころの私は、「給与とは、必ずしも労働時間に対して発生するものではない」という考え方を持っていた。*1

上司にお世辞を言ったり上司から怒られたりしている時間が労働時間に含まれる一方で、お風呂に入りながら仕事について考えている時間は労働時間には入らない。日本企業には、飲み会という形式の残業もあるらしい。

つまり、労働時間を厳格に管理するというのはそもそも無理な話なのだ。ストップウォッチを片手に勉強時間をはかっている受験生でも、5%くらいの誤差は出るだろうから当然である。

スズキの体操代未払いは、労働力の搾取というよりも信用の問題

さて、スズキの体操代の根本的な原因はどこにあるのだろうか。

私は信用関係にあると思う。

厳密に労働時間を計測するのが不可能な以上は、勤務時間と給与については次にように取り決めるしかないのだ。

勤務時間中の仕事をしていない時間に対しても給与を支払う代わりに、勤務時間外の仕事をしている時間には給与を払わない。

中期的に見て、仕事時間と勤務時間に乖離があるようなら、能力の変化とは独立して、賃金水準を見直す

さて、最近になって残業代未払いが問題になっているのは、電通で自殺者が出たからでもなければ急激に残業時間が伸びたからでもないと思う。

「仕事時間が勤務時間を超過しても賃金は上がらないのではないか」という疑念が、従業員の中に芽生え始めたからではないかと思うのだ。言い換えるなら「会社は自分の努力を認めてくれるはずだ」という信用が失われはじめたのだ。

業績向上と昇給によって、時間差で残業代がしっかり支払われていた時代が終わってから時間が経ち、心のどこかで思っていた「努力しても報われない」「会社は成長しない」「賃金は上がらない」といった思いが顕在化してきているのである。

電通の労災は、その顕在化のトリガーになったに過ぎないのではないだろうか。もしくは、シャープや東芝の債務超過が日本企業の信用失墜に拍車をかけたのかもしれない。

スズキの件もそうだ。

体操が導入された当初は、士気をあげて効率的に仕事をしようとかそういった意味合いがあったのだと思う。もしくは、健康のために、本当に任意ではじめたのだろう。

しかし、いつしかそれが形骸化して、ただの残業だと思われるようになってしまった。

「体操しても効率上がっていないよね」とか「そもそも効率が上がっても俺たちは得をしない」とか、そういった思いが沸き上がってきたのではないだろうか。

何度でもいうが、まずは自分から行動を起こすのが合理的である

さて、労働者が取れる手段は2つある。

1つは賃金を上げることだ。

賃上げ交渉が可能な企業なら思い切ってやってみるといい。賃上げ交渉というとベアくらいしか見たことがないという人もいるかもしれないが、外資系企業などでは普通のことである。それでも上がらず、「自分の努力が報われていない」と感じるのであれば転職を検討してみるといい。

もちろん、転職エージェントなどに話を聞いてみると、「あなたの能力でこんなに給与をもらっているなら満足すべきです」などと言われる人もいるだろう。日本企業に勤めている知人の話を聞いていると、「その仕事で他の人と同じだけの報酬をもらってんの?」と思えるような仕事をしている人は珍しくない。

それでも、納得感がないまま勤続するよりはマシだろう。

もう1つは、サボることである。

iPhoneにKindleのアプリを入れておけば、トイレで読書をすることは容易だ。読書は仕事のうちだと思っている人はブログでも書けばいい。デスクでヨーグルトでも食べておなかの調子が悪いアピールをしつつ、適度にサボるだけの対処法である。

仕事をさぼってアフィリエイトブログを書けば、労働時間を減らしつつ収入が増えるので一石二鳥である。

いまの労働環境に不満のある人は、思い切ってサボってみてはいかがだろうか。もちろん、自己責任でやってもらいたいところではあるが。

*1:外資系企業の多くは年俸制なので、いまも労働時間に対して給与をもらっているわけではないのだが。