外資系金融マンの読書ブログ

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頭の悪い電通社員じゃ、あの程度のCMしか作れないよね

サントリーのCMへの批判が少し落ち着いてきたところで、あの炎上案件について考察してみたいと思う。

まずは、タイトル詐欺であることを謝罪したい

マーケティングへの理解不足とその重要性

くだんのCMの代理店だった電通は「炎上は狙ってやった」などと供述しているらしい。

d.hatena.ne.jp

炎上商法とは、批判を集めることで認知度を高めるマーケティング手法だといわれる。端的に言って、ブランド棄損リスクが非常に大きいので、ブランドが重んじられるべき企業がやるものではない。

結局、イケハヤのようなアフィリエイターにしか向いていないマーケティング戦略なのだ。新聞社の記事のタイトルがこの記事のタイトルのようなものだったら、その新聞社は確実に評判を落とすだろう。

では、なぜ電通がそのような方法に出てしまったのだろうか。個人的には、バズマーケティングと炎上マーケティングを混同してしまったからだと思う。

もっと根本的には、日本企業は伝統的に研究開発部門の発言力が強く、マーケティングが軽視されがちなのだ。

マーケティング部門は花形ではなく、よくわからないことをやっている部署というイメージにすらなってしまっていることがある。

結果として、従業員もマーケティングについてよく知らないのがふつうだ。

バイラルマーケティング

バズマーケティングとバイラルマーケティングはほぼ同じ意味なのだが、バイラルマーケティングといったほうが意味をとらえやすい。

バイラルとはウイルスのことで、消費者間で感染症のように瞬く間に口コミが広がる様子を表す。バイラルマーケティングは、そのような口コミの伝播を狙ったマーケティングのことだ。

炎上商法が批判で注目を浴びるのに対して、バイラルマーケティングは肯定的な口コミの伝播を狙う。炎上商法とは似て非なるものなのだ。しかし、両者が混同されているところを非常によく見かける。

サントリーのCMに関して電通は次のように答えているらしい。

クライアントの希望する『バズらせろ』『商品を売れ』という要望を満たすのが正しいのか。倫理的に正しいと言われていることをしてアウトプットを適正なものにするのが正しいのか

さてここからが問題だ。「バズらせる」とはバズマーケティングを成功させるくらいの意味であり、バズマーケティング(=バイラルマーケティング)は肯定的な口コミの伝播を意味する。サントリーは少なくとも炎上商法を希望していないのではないだろうか。

もちろん、最終的に承認したのはサントリーだろうからすべての責任が電通にあるとは思わない。ただ、クラアントの希望だからなどと言っているのであればとんだ勘違いである可能性も否めない。

マーケティングの変遷

マーケティングというのはおおざっぱに3つのステップを通じて成長してきた。

  • 高品質で安くするというプライシング戦略

  • 競合と違う商品を出すポジショニング戦略

  • 消費者の潜在的欲求にアプローチするunmet needs

近年利用されているのはunmet needsという、潜在的ニーズにアプローチする手法だ。

iPadが発売される前の消費者は、表層的にはノートパソコンとスマートフォンという組み合わせに満足していたはずだ。スマートフォンがもっと大きければと思うどころか、ポケットに入らないと使いづらいとさえ考えていただろう。ノートパソコンでも重視されるのは処理速度やバッテリ性能であり、バッテリー性能No.1であったPanasonicのLet’s Noteが人気を博した。

しかし、実際にiPadが登場するとどうだろうか。この「画面の大きなスマートフォン」に人々は魅了された。

ノートパソコンは大きくて邪魔だといい、ハイスペックを好んでいたはずなのに、Let’s NoteやThinkpadよりもだいぶんスペックの劣るiPadを使い始めたのだ。バッテリ持ちもiPadよりLet’s NoteのほうがよいのにiPadが選ばれる。スマートフォンはポケットに入れやすいほうが良いと言っていた人も、iPadが出てくると口をそろえて「これはタブレットだからポケットに入る必要はない」というのだ。

これがunmet needsを満たすという現代のマーケティングである。人々が必要だと思っていないが必要としているものを生み出す。もしくはそういったものであるというアピールをする。

私はマーケティング企業で働いていたわけではないので、P&Gで働いていた知り合いからの受け売りなのだが。

正しいマーケティングで価値を売る

現代のマーケティングはunmet needsの争いになっているにもかかわらず、小規模な会社などではポジショニング戦略の議論がされることが多い。

ポジショニング戦略では不十分な理由は簡単で、インターネットによって無限の情報へアクセスできるようになった現代においては、顕在化しているニーズは速やかに満たされるからだ。ポジショニングを考えてマーケティングをはじめるころには他社が参入してしまっていてうまみがない。

こういった意識をもって、適切にunmet needsを満たしていけば、少なくとも今よりは高い価格で売れるはずだ。先日取り上げた書籍にもあった通り、安売りしない会社は正しいマーケティングへの努力を欠かさない。

www.blogx3.com

高品質な製品を扱う日本企業には、その商品を高く売るための努力、すなわち稼ぐための努力をしてもらいたい。

そうすれば、日本のメーカーもファーウェイの日本支社よりも高い給与を出せるはずなのだ。