外資系金融マンの読書ブログ

外資系金融マンの読書ブログ。読んだら3倍考えるビジネス書評ブログ出張版。読書の要素はあまりない。

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外資系企業とベンチャー企業のどちらが良いですか

気になっている求職者が多いらしい

外資系企業とベンチャー企業のどちらがよいですか

という質問が流行っているらしい。私としては何をどう比べているのかわからない。

私が仕事を選んだときのことを思い出すと、給与は高いほうがいいなと思って外資系の金融機関を受けただけだ。もちろん、金融こそが世の中を支えていると思っているし、資本市場を理解することこそ世の中を理解することに他ならないと信じてはいる。*1

冒頭の質問では企業体質と資本という全く軸の違うところで比較されている。どうしてこの比較になっているのかはわからないのだがどうやら「日系の大企業では成長できない」というような思想があるようだ。すなわち、変化の激しい世の中を生き抜くためには、成長できる(ことになっている)外資系企業かベンチャー企業かを選ぶべきだと考えているようである。

成長している企業にいたほうがクールであるとか、お金ももらえると考えているのかもしれない。

具体的な企業名を出して考えてみよう

漠然としすぎていてわかりづらいから、イメージしやすいように企業名を挙げた。ここに挙げている企業名はわかりやすさを重視しただけで他意はない。不都合のある方は指摘していただいてもかまわないし、適当な別の企業をイメージしながら読んでいただいてもかまわない。

  • 創業期ベンチャー: AnyPay

  • 上場ベンチャー: サイバーエージェント

  • 外資系ベンチャー: Slack

  • 外資系金融: Goldman Sachs

  • 外資系コンサル: McKinsey & Co.

  • 外資系テクノロジー: facebook

一般論としての「どれが良い」は存在しない

まず、エンジニアにとってはマッキンゼーよりもfacebookのほうがよいだろう。資本市場に興味のある人はサイバーエージェントよりもゴールドマンに行ったほうがいい。資本市場に興味のある経済学部の学生が、突然エンジニアリングを勉強してfacebookを狙うのは狂気の沙汰だ。

苦手なことや嫌いなことを仕事にすると苦痛だろうから、好きなことや「これなら頑張れそう」と思えるものを仕事にするのがよいだろう。

株や債券の勉強ならできそうだというならゴールドマンがいいし、いろんな事業を作るためなら夢中になれるという人はサイバーエージェントがいいだろう。人と人とのつながりで世界を変えたいという人にはfacebookがもってこいだ。

すごく当たり前のことなのだが、いまの新卒・第二新卒にとってはわかりづらい考え方らしい。

採用状況と身につくスキルで考える

各社で身につくスキルは全く違う。テクノロジー企業で身につくのはテクノロジーやエンジニアリングのスキルだし、ウォール街の企業で身につくのは金のにおいを嗅ぐスキルだ(あとは資本市場についてのスキルも身につく)。頭をひたすら鍛えたいのならマッキンゼーがよいのではないかと思う。私の知り合いでも、比較的頭の良い人たちがマッキンゼーに入社した。

それから気を付けなくてはならないのは、そもそも国内で採用しているのかという点だ。Slackのようなシリコンバレーのベンチャーは、上場時に多くの富豪を生み出す。これ目当てに就職する人も少なくないが、そもそもシリコンバレーでしか採用をしていないということも珍しくない。単身渡米する覚悟がないなら選べない選択肢だ。facebookも職種別に採用地域が限られているから注意が必要である。

国内でまとまった数を採用していない企業に就職したい人は、ぜひ日本からの脱出に尽力ほしい。私自身、優秀な人が長くいても得をしない国だとは思っている。

各企業が向いている人

当たり前のことしか言っていないが、結局はその人にとって何が向いているのかによって決まる。

外資系金融に向いている人

だいたい2点かな。資本市場に関心があって稼ぎたい人は外資系金融を選ぶのが一番いい。それ以上でもそれ以下でもない。

外資系金融だといろんなスキルが身につくとかそういう話はない。金融についてのスキルを除けば、根性くらいしか身につかない。

外資系コンサルに向いている人

頭のいい人なんじゃないかと思う。知り合いでも、自信がありあまっていて仕方がないような人が就職していった。あとはロジカルな人は多い傾向がある。*2

ちなみに給与は外資系金融の半分くらいという噂だ。稼ぎたいという人には向いていないだろう。

創業期ベンチャーに向いている人

AnyPayは、先日タクシーに乗ったときにたまたま広告を見かけたから挙げた。創業から約1年の若い企業だ。

こういう企業に向いているのは、文化祭の前日的なわくわく感を享受したい人だと思う。私のようなキャリアの選択肢や稼ぎばかりを気にしているタイプには向いていない。この規模の会社に入社した知り合いには「何を考えているのかわからない」という共通点があった。つまりそういう人に向いているのではないだろうか。

ただし、日本のスタートアップは従業員に出資させない傾向があるし、上場時もシリコンバレーのベンチャーほどの価格にならないので、「1発あてて引退」というようなことをできるのはCXOクラスに限られる。

ちなみに、スタートアップは採用に力を入れているので(力を入れなければ誰も採用できないので)、比較的給与が良い。中途なら年収600〜700万円くらいもらえるところも珍しくはなく、投資銀行やコンサルティングファームの出身者には1,000万円以上出すこともある。

労働時間は長め(1日10〜12時間くらい)だが、私服で通勤できたり、給与は割といい部類であったりと、ブラック企業を避けるという意味では選択肢に入ってくる企業だ。*3

上場ベンチャーに向いている人

これはだれでも向いていると思う。サイバーエージェントの社風はちょっとという人でも、DeNAやメルカリ(未上場だが)なら相性がいいかもしれない。

こういう企業に向いているのは、スピード感を味わいたい人とか、自分の手で会社を大きくしている感がうれしい人たちだろう。

あとは、単に「風通しのいい企業」が好きな人に向いているかもしれない。

成長というマジック・ワード

当たり前すぎて何言ってんだこいつと感じた方もいらっしゃると思う。みなさんにそう感じていただけているほうが安心だ。それくらいにいまの就活生は何も考えていないらしい。

ただ、就職にしても転職にしても、1点だけ注意してもらいたい概念がある。成長というやつだ。

金融業界にも成長成長と口うるさい志望者が来ることがあるが、そもそも金融業界で身につくのは金融のスキルだけだ。あたかも超人的に成長できるかのように期待してくる人がいるので気を付けてもらいたい。金融業界でも1つの職種に長くいると転職がしづらくなる。アナリストはアナリストにしかなれなくなるし、バンカーやブローカーもバンカーやブローカーにしかなれなくなる。投資家も生涯投資家が多いように思う。他業界にかんたんに転職できるのは、保険の営業くらいではないだろうか。

おそらくコンサルティングファームやインターネット・ベンチャーも同じだろう。コンサルティングファームで身につくのはコンサルティングのスキルだ。インターネット・ベンチャーで身につくのはインターネット関連のスキル(Webマーケティングやデータ分析)に過ぎない。

各社が意味する成長が全く異なるので、漠然と「成長」を目指して就職や転職をするのだけはやめておくべきだ。

こんなことをわざわざ書くのは、ヘッドハンターをやっている知人からも「社会人3年目くらいまでの人は本当に何も考えていない」という話を聞くからだ。

新卒と第二新卒の方は、就職時に意味もなく成長などと言わないように注意していただきたい。

*1:ほかの業界でも同じだろう。モノづくりをしている人はモノづくりこそが世の中を支えていると考えているだろうし、テクノロジー企業に勤める人はテクノロジーがわからなければ世の中の10分の1も分かったことにならない、などと考えていてもおかしくない。自分の考えに従って職業を選んでいるのだから当然だ。

*2:金融業の人はあまりロジカルではなく、「間違っているけど慣習的にこう考える」というような考えの人が多い。EBITDAやWACCなどのも基本的には「理論上で正しいかは知らないけど代わりがないから使う」というような発想の産物である。

*3:もっとも、1日12時間の労働が長く感じる人も少なくないとは思うが、過労死や鬱病が生じる職場は1日12時間以上の労働が常習化しているところが多いので、少なくとも改善にはなるだろう。