外資系金融マンの読書ブログ

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ファーストリテイリングはなぜアマゾンに負けないのか

Amazon.comは強大な企業だが互角以上に戦える企業もあるはずだ

アマゾンに肯定的な記事が続いたので、少し否定的な記事も書いてみようと思う。

小売業界はAmazon.comに食われるのか

世界最強の小売企業だったウォルマートすら苦戦している状態で、日本の小売企業が生き残れるのかを考えたい。

個人的には、ファーストリテイリングなど一部の製造小売業(SPA)は生き残り、Amazon.comすら苦戦させると思う。

物流で戦わないこと、物流で負けないこと

アマゾン・ドット・コムはロジスティクス・カンパニーである。小売で稼ぐというよりは物流で稼いでいる企業だ。

もちろん、先日書いたとおり無限の可能性を秘める「融通」企業ではあるのだが、小売企業の将来を考える文脈では小売企業とみてもよいと思う。

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アマゾン・ドット・コムの小売部門におけるコア・コンピタンスは物流である。非常に洗練された物流システムによって、他社よりも低コストにもかかわらず短時間で丁寧な発送を行える。インターネットストアが栄える時代において発送などの仕組みが洗練されているというのは非常に強大な強みである。

「ジェフ・ベゾス果てなき野望」にも書かれているのだが、アマゾン・ドット・コムの物流網はかなり試行錯誤して作られており、一朝一夕でまねできるものでもない。それは技術的にも資金的にもである。したがって、アマゾン・ドット・コムに物流で勝負を挑むのは無謀ともいえる。

一方で、物流で圧倒的な差をつけられてしまうと、インターネットストアを無視できない現代の小売業においては致命的である。最低限度の優れた物流網を擁しつつ物流では勝負をしないというのが、アマゾン・ドット・コムとの競争を念頭においたときに最も重要な戦略ではないかと思う。

製造業であるということ

Amazon.comは製造業ではない。物流に強みを持つ小売部門にはプライベート・ブランドも存在はするが、それが中心ではないのだ。あくまで「融通」の会社であるから、自社自体はモノづくりよりも融通を優先するはずだと私はとらえている。

したがって、小売業界でAmazon.comに勝負を挑めるとしたら、製造小売業(SPA)と呼ばれる製造から販売までを一貫して担っている企業でないといけないだろう。製造小売業では、Amazon.comのような “Everything Store” を目指すことはできないが、特定の商品分野においては非常に強力な競争力を持つことができる。

高品質な商品を製造できるSPAは、Amazon.comに商品を卸さなければよいだけなのだ。自社でECを構築して高品質な自社商品を販売すれば、消費者はAmazon.comではなくSPAの味方となる。

ファーストリテイリングの洗練された戦略

個人的には最も応援したい日本企業の1つがファーストリテイリングである。

ユニクロやGUといったアパレルブランドを持つファーストリテイリングが、つい最近「有明本部」を稼働させはじめた。有明本部はその名のとおり有明にあるオフィスだが、ここには企画・デザイン・物流などの機能が一括で集められている。顧客の情報を収集し、整理して、企画・デザインを行いつつ、物流まで担う高機能オフィスである。

現在のファーストリテイリングは、有明本部を拠点として物流を洗練させたうえで、顧客の情報をいち早くつかんで企画に生かすという流れを作りつつある。これによって、物流で差をつけられないという前提が整う。*1

柳井さんをはじめとする経営陣もまた、「良いものを作るだけでは売れない」「これからは情報製造小売業だ」と発言しており、情報を生かした高収益の製造業を目指していることがわかる。物流については、有明本部の設立や続くいくつもの物流拠点の稼働予定などから明らかに力を入れているのだが、柳井さんなどから「ロジスティクス・カンパニーを目指す」といった発言は出てきていないようだ。しばらくキャッシュフローが減るだろうから説明も必要なはずなのに、なぜだか物流強化については力説していないようだ。

さらに、ファーストリテイリングの衣服は非常に高品質である。もちろん、ラルフローレンなどと比較しているわけではないが、価格帯を考慮すればこれほどコストパフォーマンスのよい製品は少ない。しかも、日常的に着る衣服としては、ちょうど良い品質であり、過剰性能でもなければ安かろう悪かろうでもない。日本のメーカーには「ちょうど良い性能」を追求できる企業はそう多くないので、ファーストリテイリングは良い意味で特殊だ。

ファーストリテイリングのようなSPAが、自社で物流とECサイトを完成させれば、いくら巨大なAmazon.comといえどそう簡単に打ち勝つことはできないだろう。

*1:また、衣服というのは当日配送などへのニーズが低いジャンルなので、Amazon.comほど洗練された物流を持つ必要がないという点も大きい。物流性能での戦いになると、基本的にAmazon.comに勝てる見込みはない。